歯科医が診療中にサクッと3分で読めるように、ビスホスホネート(BP)関連顎骨壊死(BRONJ)とデノスマブ関連顎骨壊死(DRONJ)、その両者を包括した骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)について、「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」の引用を中心に簡単にまとめました。
以下の3項目を満たした場合にARONJと診断。
侵襲的歯科治療「前」のBP休薬
BP「使用中」の患者の歯科治療
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デノスマブ「使用中」の患者の歯科治療
侵襲的歯科治療「後」の骨吸収抑制薬の休薬
侵襲的歯科治療終了後、術創が治癒するまでの間は、術創の治癒状態と主疾患のコントロール状態、骨折リスクなどを主治医と歯科医とが総合的に判断し、必要であれば骨吸収抑制薬の休薬、もしくは代替薬への変更を検討する。
骨吸収抑制薬「再開時期」
1.ARONJの発生頻度
2.ARONJのリスク因子
いずれの因子もエビデンスに基づいて確定されたものではないこといに留意。
(ポジショニングペーパーより引用)
以下は、いずれも有効性が証明されているものではなく、エキスパートの意見を集約したもの。
基本的に以下の3項目に集約。
ステージに関係なく、分離した腐骨片は非病変部の骨を露出することなく除去する。露出壊死骨内の症状のある歯は、抜歯しても壊死過程が増悪することはないと思われるので抜歯を検討する。
ステージ | 臨床症状および画像所見 | 治療 |
---|---|---|
0 | 臨床症状: 骨露出/骨壊死なし、深い歯周ポケット、歯牙動揺、口腔粘膜潰瘍、腫脹、膿瘍形成、開口障害、下唇の感覚鈍麻または麻痺(Vincent症状)、歯原性では説明できない痛み 画像所見: 歯槽骨硬化、歯槽硬線の肥厚と硬化、抜歯窩の残存 注:ステージ0のうち半分はONJに進展しないとの報告があり、過剰診断とならないよう留意する。 |
ステージ1と同様 |
1 | 臨床症状: 無症状で感染を伴わない骨露出や骨壊死またはプローブで骨を触知できる瘻孔を認める。 画像所見: 歯槽骨硬化、歯槽硬線の肥厚と硬化、抜歯窩の残存 |
抗菌性洗口剤の使用、瘻孔や歯周ポケットに対する洗浄、局所的抗菌薬の塗布・注入 |
2 | 臨床症状: 感染を伴う骨露出、骨壊死やプローブで骨を触知できる瘻孔を認める。骨露出部に疼痛、発赤をを伴い、排膿がある場合と、ない場合がある。 画像所見: 歯槽骨から顎骨に及ぶびまん性骨硬化/骨溶解の混合像、下顎管の肥厚、骨膜反応、上顎洞炎、腐骨形成。 |
抗菌性洗口剤と抗菌薬の併用 [難治例]複数の抗菌薬併用療法、長期抗菌薬療法、連続静注抗菌薬療法、腐骨除去、壊死骨掻爬、骨切除 |
3 | 臨床症状: 疼痛、感染または1つ以上の下記の症状を伴う骨露出、骨壊死、またはプローブで触知できる瘻孔。 歯槽骨を超えた骨露出、骨壊死(例えば、下顎では下顎下縁や下顎枝にいたる/上顎では上顎洞、頬骨にいたる)。その結果、病的骨折や口腔外瘻孔、鼻・上顎洞口腔瘻孔形成や下顎下縁や上顎洞までの進展性骨溶解。 画像所見: 周囲骨(頬骨、口蓋骨)への骨硬化/骨溶解進展、下顎骨の病的骨折、上顎洞底への骨溶解進展 |
腐骨除去、壊死骨掻爬、感染源となる骨露出/壊死骨内の歯の抜歯、栄養補助剤や点滴による栄養維持、壊死骨が広範囲に及ぶ場合、顎骨の辺縁切除や区域切除 |
参考
•骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016
•高岡一樹、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)の現状と今後の課題、日薬理、2019
•岸本裕充、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の最新情報、日口腔インプラント、2017
•術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン