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親知らずとは?
抜くリスク、抜かないリスク

親知らずとは?

前歯から数えて8番目の奥歯を「親知らず」といいます。

親知らずとは?抜くリスク、抜かないリスク
図1. お口全体を撮影したパノラマX線写真

親知らずは、10歳頃にアゴの骨の中で形ができはじめ、お口の中へは20歳頃に生えてきます。

もっとも、親知らずが無い「先天性欠如」であることも多く、上下左右4本の親知らずがすべてそろって生えているのは、現代日本人では36%だそうです(山田、2004)。

親知らずが欠如する割合は、時代とともに変化していて、昭和初期以降では、欠如する割合は低くなっているそうです(山田、2004)。

親知らずは、他の永久歯よりも極端に遅れて生えてくるため、生え出る場所が不足し、位置異常を起こしやすく、「傾斜」して生えたり、歯肉に埋まったまま「埋伏」したりすることがあります。

親知らずによる病気

虫歯・歯周病

親知らずが「傾斜」して、歯肉に半分埋まった「半埋伏」状態では、親知らずの周りが「不潔」になりやすく、親知らずだけでなく、その手前の歯(第二大臼歯)まで虫歯や歯周病になることがあります。

親知らずによる病気
図2.水平に傾斜した親知らず
  1. 1. 親知らずと、その手前の歯が両方とも虫歯になっている(赤い矢頭▲の先)。
  2. 2. 親知らずの手前の歯を支える骨が、歯周病で破壊されている(赤い点線と↓の部分)。

歯冠周囲炎

親知らずの周囲の歯肉が、急に赤く腫れて痛くなることがあり、これを歯冠周囲炎、あるいは智歯周囲炎といいます。

20~30歳台に多くみられますが、60歳を過ぎても散見されます。

歯冠周囲炎が悪化すると、顔まで腫れて、口が開きにくくなったり、ノドが痛くなったり、首や胸にまで炎症が広がれば、命に関わることもあります。

親知らずは抜いたほうがいいのか?

親知らずは、虫歯や歯周病、歯冠周囲炎などの原因になることが多く、抜歯となることが多いですが、正常に生えて機能している場合や、将来的に利用する可能性がある場合は、抜歯せずに残しておいたほうが良いこともあります。

抜くリスク、抜かないリスクを十分に比較して、歯科医師と相談して判断されると良いでしょう。

親知らずを抜かないリスク

1.親知らずの病気(虫歯・歯冠周囲炎など)が悪化するリスク

親知らずは、奥にあるために虫歯治療が困難だったり、メンテナンスが困難だったりします。虫歯があれば、悪化して痛みが出ることがありますし、歯冠周囲炎であれば、繰り返すことがありますので、抜歯を前向きに考えます。

2.親知らずの手前の歯が病気(虫歯や歯周病など)になるリスク

親知らずの手前の歯(7番目の歯、第二大臼歯)は、「人生100年時代」に使い続けて欲しい歯です。

親知らずがあるために、親知らずの手前の歯が虫歯になっていたり、常に不潔で虫歯や歯周病のリスクが高いと判断できる場合は、親知らずの抜歯を前向きに考えます。

親知らずを抜くリスク

1.抜歯による痛み・腫れなどの合併症のリスク

抜歯による主な合併症(手術併発症)には、下記のようなものがあります。

痛み・腫れ 3日程度は痛み・腫れが予想されます。
痛み・腫れが気にならなくなるまで1~2週かかることがあります。
出血・内出血 2日程度は、にじむ程度の出血はあります。出血が気になる場合、ガーゼなどを出血部位に押し当て、噛むなどして圧迫止血してください。
頬に青アザが出ることもあります。1〜2週間で消えます。
周囲の歯・骨 周囲の歯の損傷、脱臼、詰め物・被せ物の脱離など、偶発症が起こることがあります。
周囲の骨が薄い場合、薄い骨に亀裂や破折が起こることがあります。
術後、尖がった骨の一部が歯ぐきの外に露出することがあります。
一部残存 根が細く曲がっている場合、抜歯の途中で根が折れることがあります。
無理して歯の全てを取らずに、一部を残すことがあります。
感染 まれに手術部位が感染し、しだいに赤く腫れ、痛みや膿が出ることがあります。
典型的な術後感染は、術後すぐではなく、10日程度経過してから生じます。
顎関節の脱臼 きわめてまれに顎関節が脱臼することがあります。
脱臼した場合、すぐに整復します。
歯の誤嚥・吸引 抜去歯が咽頭に落ちる場合があります。咽頭に歯が落ちた場合は、直ちに横を向いて、歯を吐き出してください。食道内へ誤嚥した場合、多くは2~3日後に排出されます。
気管に吸引された場合は、気道を閉塞して危険なことがあります。
処置中は、鼻で呼吸し、口では呼吸しないでください。
処置の中止 予測できない偶発症により外科処置の遂行が困難な場合は、処置を中止し、必要に応じて高度医療機関へ紹介させていただくことがあります。
合併症の治療費 処置の中止や、合併症の治療に対しても、保険診療の制度に則って、治療費が発生します。
上顎洞の交通
(上顎の臼歯)
手術部位が、上顎洞と近いので、上顎洞に穴があき、口と鼻が交通することがあります。その場合、鼻血や上顎洞炎などの鼻症状が生じることがあります。
きわめてまれに抜歯する歯が、上顎洞に迷入することがあります。
皮下気腫 回転切削器具から出る圧縮空気が皮下に入り、皮下気腫を生じることがあります。ほとんどの場合、1〜2日で自然に改善します。
感覚障害
(下顎の臼歯)
手術部位が、下歯槽神経や舌神経と近いので、術後に、唇・あご・歯ぐき・舌に、麻酔が効いているような「しびれ感」などの「感覚障害」が残ることがあります。多くの場合、一時的な症状で、月単位で徐々に改善しますが、年単位の長期間継続することもあります。

2.将来的に利用できる親知らずを失うリスク

1)「ブリッジや入れ歯の支えとして親知らずを使う」という選択肢がなくなるリスク

親知らず以外の奥歯を失った場合、ある程度しっかり生えている親知らずであれば、ブリッジや入れ歯の支えとして使うことができます。

親知らずを抜歯してしまえば、それらの治療の選択肢は無くなります。

2)「親知らずの移植」という選択肢がなくなるリスク

親知らず以外の奥歯を抜歯しなければいけなくなった場合、抜歯してできた「穴」に、親知らずを「移植」し、再び噛める状態にできることがあります。

親知らずを抜歯してしまうと、「移植」に利用できる歯(ドナー歯)がなくなり、「移植」という選択肢がなくなります。

「歯の移植外来」についてはこちら

3)「矯正治療で親知らずを噛み合わせに参加させる」という選択肢がなくなるリスク

親知らずの手前の歯(7番目の歯)に虫歯などの問題がある場合、「7番目の歯」を抜歯して、代わりに親知らずを矯正治療で、抜歯した7番目の歯の場所まで移動させて、噛み合わせに参加させることができる場合があります。

親知らずを抜歯してしまえば、そうした矯正治療の選択肢は無くなります。

参考
日本人第3大臼歯欠如頻度の時代変化、山田ら、2004

記事監修
院長 宮嶋 大輔

新潟大学卒
東京医科歯科大学大学院卒業
歯学博士、口腔外科認定医、インフェクションコントロールドクター。

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