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歯科医のための「感染性心内膜炎」の抗菌薬予防投与

歯科医が診療中でもサクッと1分で確認できるように「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン (2017 年改訂版)2019年7月更新)」と「JAID/JSC感染症治療ガイド2019」を簡潔にまとめました。

ポイントは「1.予防を考える患者」「2.予防を考える処置」「3.予防に使う抗菌薬」の3つです。

1予防を考える患者

1)特に重篤な感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く、予防すべき患者

(推奨の強さ 1:強く推奨する、エビデンス総体の強さ B(中))

  1. 1. 人工弁置換患者
  2. 2. IEの既往がある患者
  3. 3. 複雑性チアノーゼ性先天性心疾患(単心室、完全大血管転位、ファロー四徴症)
  4. 4. 体循環系と肺循環系の短絡造設術(シャント)患者

2)必ずしも重症とならないが感染性心内膜炎を引き起こす可能性が高く、予防した方が良いと考えられる患者

(推奨の強さ 2:弱く推奨する(提案する) 、エビデンス総体の強さ C(弱) )

  1. 1. ほとんどの先天性心疾患(単独の心房中隔欠損症(二次孔型)を除く)
  2. 2. 後天性弁膜症(逆流を伴わない僧帽弁狭窄症ではIEのリスクは低い)
  3. 3. 閉塞性肥大型心筋症
  4. 4. 逆流を伴う僧帽弁逸脱

2予防を考える処置

出血を伴ったり、根尖を越えたりするような侵襲的な処置 では、感染性心内膜炎の予防として、抗菌薬の投与を考えます。

  1. 1. 抜歯などの口腔外科処置
  2. 2. 歯周外科
  3. 3. スケーリング
  4. 4. インプラントの埋入
  5. 5. 感染根管治療

3予防に使う抗菌薬

経口の第一選択薬はアモキシシリン(サワシリン®、アモリン®、パセトシン®)です。ペニシリンアレルギーでは、クリンダマイシン(ダラシン®)を選択します。

投与方法 ペニシリン
アレルギー
抗菌薬 投与量 投与方法
経口投与可能 なし アモキシシリン 成人:2g(注1注2)
小児:50mg /kg
処置1時間前に単回投与
あり クリンダマイシン 成人:600mg
小児:20mg /kg
アジスロマイシン 成人:500mg
小児:15mg /kg
クラリスロマイシン 成人:400mg
小児:15mg /kg

注1 または30mg /kg
注2 なんらかの理由でアモキシシリン2gから減量する場合は、初回投与から5-6時間後に、アモキシシリン500mgの追加投与を考慮する。

参考
感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン (2017 年改訂版)2019年7月1日更新
JAID/JSC感染症治療ガイド2019

記事監修
院長 宮嶋 大輔

新潟大学卒
東京医科歯科大学大学院卒業
歯学博士、口腔外科認定医、インフェクションコントロールドクター。

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